梶は一人、リビングでまんじりともせず過ごしていた。
斑目は夜行と出かけて、マルコも斑目からもらった小遣いでお菓子の卸売店に行ってしまい、一人で留守番していた。そこへ、門倉立会人が部屋を訪ねてきた。
「門倉さん! 急にどうしました? もしかして、賭郎勝負ですか?」
「いえ。貘様の指示で、梶様とマルコ様に昼食を作りに参りました」
「えっ。門倉さんが、わざわざ?」
驚く梶に、玄関を塞ぐ身丈で立ちはだかっていた門倉が「失礼いたします」と戸口をくぐる。
立会人の黒スーツを着た門倉は、地味な買い物バックを提げ、妙に慎ましい面持ちで梶の案内を待っていた。梶は恐縮し、内見に着た客を案内する業者よろしく、キッチンへ案内した。
斑目が拠点の一つにと買った5LDKのマンションは、梶、斑目、マルコの三人で住むにはゆとりがありすぎるが、室内で何かするには手狭に感じる。例えばゲーム。例えば賭博。勝負する人間の他に立会人が二人も加われば、生活空間をすべて横にどかしてなお、狭苦しく感じる。
今のところ、この部屋で重要なゲームを催さずに済んでいるが、斑目は「そのうちやると思うよ」と嘯いていた。
遊戯が終われば後片付けをしなくてはならない。なんとなく住み慣れてきた部屋は、勝負のあと、引き払うことになるだろう。
斑目が賭郎の「お屋形様」になって以来、梶とマルコはちょくちょく引っ越しをしている。傍目にはあてどない旅に見えるが、梶とマルコは斑目貘と賭郎という箱船の乗務員として、他の誰より所在が明らかだった。
今の梶には、引っ越しを「部屋の片付け」と呼ぶ斑目の感覚が、ぼんやり理解できる。
斑目は根無し草のようでいて、この国の、世の中の、もっとも深い場所に根ざしている。この世の誰よりも盤石な足場の上にいる。その隣に居て、所在ない心地になりようはずがない。
斑目の得体のしれない深度は相変わらずだが、梶は気にしていない。気にするとしたら、引っ越し先の近所に、マルコが好きな菓子や惣菜を扱うスーパーやコンビニがあるかどうかだ。
一度、都内の一等地でやむを得ず缶詰状態になったことがある。好きなお菓子が近場のどこにも置いてなかったため、マルコはまあまあしょげた。斑目は見ていないので実感がないかもしれないが、食べ物のことでしょげたときのマルコは、本当に痛ましい。
(あのときは立会人の……三鷹さんが、お菓子を買ってきてくれたっけ)
三鷹立会人は強面の老婆だが、情に厚く面倒見がいい。梶たちの様子を他の立会人から聞きつけたのか、スーパーの袋にいっぱいの菓子を、マルコに差し入れてくれた。差し入れだけではない、食材を準備してきて、手製の中華料理を振る舞ってくれた。
当時、外部と完全な音信不通で、缶詰状態を強いられていた二人は、三鷹の気遣いと温かい手料理にくたびれた心身を癒やされ、励まされた。
『お屋形様の右腕ならしゃんとおし。まったく。だいたい、腕だって、ただぶら下がっているものじゃないだろうに』
「貘兄ちゃん」の不在にしょぼくれているマルコを見て、三鷹は舌打ち交じりに叱ってきた。言外に、企みに夢中になるあまり二人をほったらかしにしている斑目を、厳しく責めているようでもあった。
三鷹は、厳しい表情で無駄口を叩かず、とっつき悪い老婆の佇まいを終始崩さなかったが、二人を、特にマルコを、気に掛けている様子だった。マルコの過去を、斑目から聞いていたのかもしれない。
立会人との関係や距離感は様々だ。ただ、誰もが「お屋形様」の両腕である梶とマルコを尊重する。その待遇に、梶は時々腰が浮つく心地になる。
今日、突然の訪問してきた門倉にも、同じ居心地悪さを覚えていた。
梶は、広々したリビングから奥のキッチンを振り向いた。門倉は、立会人の黒服姿のままで、昼食の支度を始めている。勝負以外で立会人達に奉仕されるのにいまだ慣れず、梶は間を持たせようと無駄に話しかけてしまった。
「三鷹さんって、中華料理屋さんにおつとめだったんですか?」
「さぁ。あいにく私は、三鷹立会人のことをあまり知りませんので」
梶の振った世間話を、門倉は丁重に辞退した。振り向かず、昼食の下ごしらえに余念がない。
門倉が、専属立会人として家事をするのは、もう何度目かになる。料理してもらうのも初めてではない。そんな用事で立会人を呼んでいいのか、と梶は首をひねったが、斑目はまるで気にしていなかった。
『いーのいーの、お屋形様の面倒を見るのも彼らの仕事だから』
鷹揚な主人ぶってのたまう斑目に、側に控えていた夜行妃古壱は「初耳ですな」と言い、呼ばれて掃除に来ていた門倉も「初めて知りました」とやたら静かな口調で言い放った。
同じ事を、切間創一が放言したなら違う反応をしたのかもしれない。
斑目は半眼でニンマリ笑ったきり、宣言も撤回もしなかった。以降も、呼ばれた立会人が怪訝な顔で言われるがまま家事をして帰っている。その中で、一番粛々とこなすのが門倉だ。
(確かに立会人はお屋形様の命令に従う決まりなんだろうけど……貘さん、門倉さんに頼りすぎじゃない? 俺だって料理くらい出来るって言ってるのに)
思い返すと、このマンションに来てから明らかに、門倉の召喚率が上がっている。門倉に聞いたところ、なんでも住まいに近いのだという。本当か嘘か、話を聞いただけでは判別できないのが賭郎立会人だ。勝負の場以外では、中立かつ公平を堅守する必要はない。勘ぐられるのが嫌で、適当に話を合わせていてもおかしくない。
それを差し引いても門倉は献身的だと、梶は思う。生活の面倒を何くれなく見てくれる。もちろん、賭郎の立会にも顔を見せる。梶が託された勝負には、専属立会人として同行してくれる。本当によく世話を焼いてくれるのだ。
(立会人の本分じゃないのに、こんなに親切にしてもらっていいのかなあ)
キッチンから出汁の匂いが漂ってくる。油の爆ぜる音と、鍋で湯を沸かす音がしていて、これは天ぷらうどんか天そばだな、と梶はそわついた。そろそろマルコも帰ってくるだろう。
なんなら門倉も一緒に食べていけばいい。梶は温かい気持ちになって、ソファから腰を上げた。
「門倉さん。もしかしなくても、天ぷらですよね? 俺、手伝いますよ」
「いいえ、もう出来上がりますので」
腰を浮かせた梶だったが、にべもない門倉の答えに渋々ソファに座り直した。背もたれ越しにキッチンを振り向いたまま、気まずい顔で声を掛ける。
「なんか本当に、すみません、揚げ物なんて大変なのに。貘さんが……」
「お屋形様から献立の指定はありませんでした。私の事情で選んだ献立です」
「そ、そうなんですね」
わざわざ、と思いながら梶は口を噤む。
思い返してみると、門倉はいつもちょっと凝った料理を用意してくれる。案外、三鷹のように料理が得意か、趣味なのかもしれない。
天ぷらを揚げる音が落ち着いて、脇に置いたスチール製の揚げ物バットにからりと揚がった天ぷらが並んでいく。丈の長い黒服と、やや生活感に欠けるシステムキッチン、料理の匂い、全部がアンバランスのまま、綺麗に収まっていた。
日常にはめ込まれた非日常に、梶の視線がぼんやりと和んでいく。
(うどんと揚げたての天ぷら……うーん、贅沢なお昼だなぁ)
そうしているうち、玄関からマルコの元気良い「タダイマ!」が聞こえた。大きな足音と共にリビングに入るなり、キッチンの門倉を見て「門倉だ! じゃあ、お昼ごちそう!?」とガッツポーズする。
「ねっ、門倉、何作ってる? なに?」
床に荷物を放り出すと、勢いよくキッチンに近づいていく。わっと駆け寄ってきたマルコに、門倉はコンロを背にして素早く振り向いた。
「もう出来ますから、梶様と一緒にお待ち下さい」
マルコとフライパンの間に立ちはだかって、やんわり制止する。油を扱うキッチンに子供を立ち入らせないよう、遠ざけてテーブルに着席させる、淀みない動きだ。年長者の面倒見よさを見て、梶は目を丸くしてしまう。
門倉の暴を目撃したことがあるだけに、家庭的な穏やかさがにわかに信じがたかった。
マルコが上機嫌で、梶の隣に座る。床に放り出した菓子でいっぱいの袋を脇に置き、横から梶を覗き込んだ。
「天ぷら、カジがリクエストしたの?」
「門倉さんが決めてくれたんだ。きっといい材料が手に入った、とかじゃないか?」
「ほんとう? すっごく楽しみになってきたよ!!」
マルコが両腕をわくわくと落ち着きなく動かしてみせる。食事を待ちきれない子供の動きをそっくり真似ていて、梶は思わず笑った。幼少期の自分がやっていたのと比べると、嘘がなく、素直な愛嬌に溢れている。
やがて、できたての天ぷらに透き通った出汁のうどんが並んだ。揚げたての衣から立ち上る香ばしさに、梶とマルコは喉を鳴らす。
「「いただきます!」」
二人揃って合掌するや、さっそく天ぷらに齧りついた。蕎麦のだしにひたし、ザクザク音を立てて食べていく。大葉、蓮根、茄子、人参、舞茸、海老、鱚。豪勢な天ぷらは、コシの強いうどんと共にあっという間に消えていく。
門倉は、おしゃべりする余裕もなく頬張る二人を、注意深い眼差しで観察していた。
やがて、腹がこなれてきた梶は、一息ついて箸を止めた。横で静かに眺めている門倉を顧みる。
「すごく美味しいです、この天ぷら! あとおうどんの出汁も、本格的で。お店で食べるのより美味しいですよ」
「お口に合えば何よりです」
「前に作ってもらったのも美味しかったなあ。門倉さん、料理お好きなんですか? それとも、料理屋の経験があるとか?」
「いえ。……ただ、必要に迫られて上達した、というのはあるかもしれません」
梶は、そうなんですね、と相槌を打つ代わりに、答えた門倉の横顔を見やった。
髪を下ろし眼帯をかけた門倉は、さっきまでの淡々とした端正な面持ちとうって変わって、奇妙なしかめっ面を浮かべている。今にも噴き出しそうになるのをどうにか堪えた──あのね不謹慎な笑いの前兆とも違う、妙なしかめっ面だった。
梶が、初めて見る門倉の表情に、ぽかんとする。
門倉は、梶の視線に気づくや、咳払いひとつで表情を拭い、淡々とした立会人の顔に戻ってしまった。ほんの数瞬の出来事だった。
(今の門倉さんの顔、……何だったんだ!?)
梶は、まじまじと門倉を見つめる。もう意識は食事と向き合っていなかった。梶の様子に気づいたマルコも、門倉を顧みる。二人の視線に気づいているだろうに、門倉はスンとした顔のまま、目を伏せている。
すまし顔の門倉を見つめていたマルコは、自分と梶の前にあるどんぶりと天ぷらを見て、門倉が一歩引いて座している様子をもう一度見てから、ハッとした。おずおず箸を置き、項垂れて上目遣いに門倉を見つめた。
「門倉は、食べない……?」
マルコの言葉に、梶もハッとする。今更と思いつつ、とってつけたような台詞を口にする。
「あの、門倉さんも一緒に、食べませんか?」
「いえ、私は──」
門倉が梶の誘いにかぶりを振ろうとしたその時、ピリリ、と携帯が鳴った。門倉は「失礼」と言い置いて、すぐ席を外した。
うどんのお椀と天ぷらの皿を前に、マルコがテーブル下に手を隠す。
「門倉も一緒に食べたらいいのに」
「そうだよな。もう一回、聞いてこよう」
ばつの悪い顔になっているマルコに、梶が優しく告げる。残りの天ぷらをマルコの皿に移してやると、立ち上がって門倉の後を追いかける。
門倉はリビングを出て、廊下で電話に出ているようだった。
聞き耳を立てようとした梶は、すぐ思いとどまった。他の賭郎会員に関する話題だったら、立ち聞きするのは拙いかもしれない。
(でも、聞かれてまずい話なら、僕らに聞かれないようにするよな)
周囲に気取られないよう、慎重に話しているなら、ちょっと耳をそばだてたくらいでは、聞き取れないだろう。立会人同士の会話では符牒も使われると聞いた。
梶は、電話が終わったのを見計らって声を掛けようと決めると、会話の気配だけ伺い、それとなく耳をそばだてた。
ドアの向こうから、門倉が応対する声が聞こえてきた。かなりはっきり聞こえる。声を潜めて話す内容ではないらしい。
「お前が天ぷら食いたいって言うたんじゃろ。……はあ? 知らんわ。どうせ、しょうもない仕事じゃ。さっさと終わらさんかい」
上司に対する敬語でも慇懃な丁寧語でもない。苛立ちを包み隠さず吐き捨てる話し方に、梶はびっくりした。
(めちゃくちゃ言ってるうえに、すごく怖い!)
堅気の話し方ではない、恫喝じみた方言にすくみあがった梶だが、すぐに、プロトポロス島での出来事を思い出した。
矛盾遊戯の怪我で寝込んでいた時、傍に控えていた門倉は、レシーバー越しに他の立会人と話していた。事務的な話し方ではない。気の置けない相手に向かって、世間話をする話し方だ。方言特有のイントネーションを含んだ、あの声。同じ声色だった。
ただ、今聞こえる声は、とても刺々しい。親しいさゆえの、遠慮ない苛立ちが込められている。
(これは、賭郎絡みの話題じゃないっぽいぞ)
梶は、このまま盗み聞きしてしまっていいのか、迷い始めた。同時に、立会人のプライベートに対する野次馬根性がむくむくと沸いてくる。
ドアの向こうの門倉は、梶に聞かれているとも知らず話し続けている。
「先に……って、は? 手間じゃろうが。おどれが定時で帰ってくれば済む話じゃ。……うん、ほうじゃ。ワシを待たしとうなけりゃあ、その仕事、さっさと終わらせるんじゃのお」
門倉は、最後に相手を挑発するせせら笑いで言い放ち、スピーカーから洩れる相手の声を無視して、一方的に電話を切った。
唐突に終わった電話に、梶ははっと我に返る。
(まずい!)
完全に、盗み聞きする態勢でドアに貼り付いている。見つかれば弁解しようがない。そのうえ、相手は弐號立会人だ。万に一つないと分かっていても、粛正の絵図が脳裏を過る。
(まずいまずい、バレたらぺちゃんこにされかねないぞ……!)
梶はリビングに引き返そうと、足音を忍ばせて、そろりそろりと後ずさりし始めた。来た道をもう一度踏みなおす、
しかし、門倉には、聞き耳を立てている梶のシルエットが磨りガラス越しに見えていた。抜き足差し足で離れようとする梶に向かって、わざとらしく足音を立ててドアに歩み寄り、勢いよく開け放つ。
「あ、……」
青ざめた、申し訳なさそうな顔で見上げてきた梶に、門倉は音がしそうなほどニコリと微笑んで見せた。
「中座、失礼いたしました。梶様」
「い、いえ、僕の方こそ、その……」
梶が言い淀んでいる間に、門倉は気にせずキッチンに向かい、手早く片付けを始めた。怒っているというより、単純に急いでいるように見える。
盗み聞きの埋め合わせとばかり、梶は慌てて手伝いに向かった。隣に並び、汚れた食器類をまとめる。門倉は、謝りたそうに隣で口ごもる梶を見ると、人が悪い笑みを浮かべた。
「では、片付けをお願いしてもよろしいでしょうか、梶様」
謝罪の機会の代わりに差し出した仕事に、梶は一も二もなく飛びついた。
二人の様子を黙って観察していたマルコも、キッチンのやり取りを聞くなり、食べ終えた食器を持って大急ぎでやってくる。
「マルコも、片付けするよ! てんぷらおいしかった!」
流しに食器を下ろして振り向いたマルコを一瞥し、梶を見てから、門倉は念を押した。
「どうか油の扱いにはお気を付けを。マルコ様も、梶様も」
「わかった!」
元気よく返事をしたマルコの隣で、梶も短くお辞儀をする。
「門倉さん、ごちそうさまです。ほんとうに、すごく美味しかったです」
門倉は手袋を嵌め、持ってきた保冷バッグを担いでから、恐縮している梶を見やった。
「ひとつよろしいでしょうか」
「はい」
「あえて言うなら、どの具材が一番美味しいと思われました?」
「え? 天ぷらですか? うーん……」
梶とマルコはしばらく顔を見合わせてから、門倉の問いにそろって答えた。
斑目のマンションを出た門倉は、ひとまずマンションから見えないあたりまで黙々と歩き続けた。持ち慣れない保冷バックは、肩に担ぐにも手に提げるにも持ちにくい。だが、昼下がりの街を、賭郎立会人の黒服に不似合いな保冷バッグをぶら下げて闊歩するのは、不思議と愉快だった。神妙な表情で取り繕っていても、頬のあたりが笑いで引き連れてくる。
途中の交差点で立ち止まると、さっき切った電話先にかけ直す。
コール三回で出た相手は、門倉が口を開くより先に、焦りの滲んだ声でまくしたててきた。
『ええ加減にしつこい! 二十時上がりなんか無理じゃ言いよるじゃろ、先食うて先に寝とけ!』
門倉が、早く帰ってこいとさんざんつつき回したせいか、相手の苛立ちは限界まで来ているようだ。小声の恫喝に、門倉は鼻を鳴らす。
電話の向こうでは、人が集まりざわつく物音がしていた。誰かが音頭を取るような、招集を掛けるような大声を出し、大人数のすれ違う足音が、ばたばたと続く。屋内で、会議か何かが始まるに違いない。
門倉は頭の隅で、最近あった大規模な特殊詐欺事件の記事を思い浮かべる。警視庁は逮捕に本腰を入れるときめたらしい、若手の出世頭に陣頭指揮を執らせるつもりなのだろう。逮捕するまで帰れない日々の始まりだ。
『おどれも解っとるじゃろ。しばらく帰れんのじゃ』
スピーカー越しの声は、少し悲壮感を漂わせている。急な予定変更を痛恨に思っているのだろう。言葉を切ったあとも、電話を切り上げようと焦る息づかいが聞こえてきた。
門倉は、その焦りを胸いっぱいに吸い込んだ。食材の詰まった保冷バッグを見やり、ニタニタと口を歪ませる。そして、もったいぶった調子でゆっくりと囁きかけた。
「こっちの予行演習は完璧じゃ。あとはお前がその仕事を終わらして帰ってくるだけやが……早うせんと、うまいキスが、わやになってしまうかもしれんのぉ」
何の応答もなく、電話が切れる。唐突な態度に奮起する相手の後ろ姿を見て、門倉はとうとう声をあげて笑ってしまった。
[了]
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